それぞれの暮らし vol 2

自然体の家 ーBe Naturalー

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自然体でくらす

海辺の街で、日常を丁寧に紡ぐ
ふたりの暮らし

スペースオーケストラが手がけたリノベーション住宅で暮らすふたり。
これまでの彼らの人生と、海辺の街であたらしく始まるこれからの物語の気配をご紹介します。

01 出会いのとき
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梅の花に導かれて

ふたりが出会ったのは、今から10年以上前のこと。
梅の花が香る季節、酒宴の席だった。

彼はそのとき、日本を初めて旅していた。
母国を出発し、各国を巡りながら日本へ。
東京や大阪を経て、さらに「人に出会いたい」と福岡へと足を延ばしていた。
偶然その場に、彼女も訪れていたのだ。

ふたりは酒宴の後も、そのまま午後のひとときを、街を歩きながら話し続けた。

特に、何かを期待していたわけではありません。ただ、流れというか、お互いのエネルギーや惹かれ合う気持ちの中で、自然と物事が生まれていった感じでした

ただ、歩きながら話し、時間や経験を共有していく。
彼女もまた、彼の自由な生き方に刺激を受けていた。

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シンクロする、ふたりの時間

彼らは後に、その時間をこう振り返っている。

人生って何なんだろうとか、今何が起きているんだろうとか、そんなことをずっと話していました。

  

旅の途中で出会い、街を歩きながら人生を語り合う。
そんな時間のなかで、ふたりはゆっくりと距離を縮めていった。
彼は彼女のことをこう語る。

落ち着いたエネルギーというか、優しくて、感じがよくて。自然体でいられる感じがしました

自然体でいられること。
それが、ふたりの時間の始まりだった。

02 豊かな人生を形づくるもの

豊かな人生を形づくるもの

この国では、まだ「形」に重きが置かれる場面も少なくない。
けれど、彼らは静かにこう話した。

ヨーロッパでは、関係を急いで形にすることをそれほど重視しない。大事なのは、形式よりも関係性そのものなんです

その言葉に、ふたりの想いが重なる。
東京で働いていた頃、彼女はさまざまな女性の生き方に触れてきたという。
この世界には、決められた道だけではない、もっと自由な選択肢があることを知った。

関係性があれば、豊かな人生はつくれるんだなと

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名前や制度に縛られず、パートナーとして寄り添って生きていくことはできる。
それぞれが自立したまま、ときに支え合いながら並んで歩いていく。
その距離感が、ふたりには心地よかった。

言語をこえて

日常的な会話は、英語を使う。
どちらにとっても母国語ではないけれど、それを特別な壁だと感じたことはない。

もし衝突や意見の違いがあったとしても、それは言語の問題ではないと思います。どんな関係でも、折り合いをつける必要がありますから

関係は、いつも完全ではない。
違いがあるからこそ、言葉を選ぶ。
少し考えてから、伝える。

何かを言う前に、少し考えること。それが、日常のなかでも大事だと思います

理解しきれなくてもいい。
分からなければ、話せばいい。
そして、自分らしさも忘れない。

世の中には複雑なルールがたくさんありますが、少し合わせることは自然なことだと思います。 でも、それでも自分らしくいることは大切だと思うんです

相手に合わせすぎないこと。
自分の想いだけを、通そうともしないこと。
そのあいだにある、ちょうどいい距離。
ふたりはパートナーとして、その関係を静かに育んできた。

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03 人生は「日常」
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人生のほとんどは「日常」

暮らしのその先に、自然に行きついたのは居心地のいい「住まい」だった。
新たな環境を選ぶときにも、ふたりの感覚は変わらなかった。

ヨーロッパで暮らしていた頃、古い住まいを自分たちの手で少しずつ整えていった経験がある。
壁を塗り替え、空間を整え、暮らしに合わせて住まいを変えていった。

ヨーロッパでは、家を自分たちで直しながら長く暮らすことは、特別なことではないんです

住まいは完成されたものではなく、暮らしとともに育っていくもの。
その感覚が、ふたりの中に自然と残っていた。

Perfectじゃなくても

海の近くで暮らしたい。
自然が感じられる場所にいたい。

海や自然の近くにいられるのは、とても贅沢なこと。海でも森でもいいので、自然のそばにいたいと思っていました。このあたりは静かな環境で、落ち着いているんです。天神や博多は便利ですが、少し大きすぎると感じることもあります

街の利便性と、自然の近さ。
その両方がある場所を探して、このエリアにたどり着いた。
最初から、全てがパーフェクトではなかったけれど──

少し迷いもありました。でも、100%理想の場所というのは、なかなかありませんから

静けさを選べば、少し不便になる。
便利さを選べば、静けさから遠ざかる。
けれど、その折り合いのなかで暮らしは形になっていく。

今は、そのバランスが見えてきた気がします

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小さな違いを愉しみながら

自転車で海へ行くこと 自然の中を歩くこと
温泉でくつろぐこと
ローカルの食を愉しむこと
旅先で、目的を決めずに過ごすこと

頭で考えるのではなく、感性で愉しむ時間が心地いい。
けれど、何より大切なのは身近な時間だ。

結局のところ、人生のほとんどは日常の時間ですから

その言葉に、すべてが込められている。
海の近くで、テーブルを囲み、 本を読み、勉強をし、好きな音楽に身を委ねる。

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ここは海も近いですし、テーブルでゆっくり過ごすことができます。
勉強したり、本を読んだり、音楽を聴いたり──
そうやって日々の時間を愉しんでいます

Be Natural

料理の時間も、そのひとつだ。
彼女が野菜をたっぷり使った地中海料理やギリシャ料理、イタリア料理などをつくることもあれ ば、彼が豪快な料理で彼女を驚かせることもある。

彼は残したらもったいないから、全部入れちゃえって。野菜がゴロゴロ入ったズッキーニのパス タ、忘れられません

私は、いつも野菜を丸ごと使うんです。最初に見たとき、『あ、野菜って半分だけ使うこともある んだ』と思いました

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そんな小さな違いも、笑いながら受け入れていく。
その積み重ねが、ふたりだけの「暮らし」になる。

自然体でいられる相手と、自然体でいられる場所で暮らすこと。

ーBe Natural ー

それはとてもシンプルなようで、実は難しい。 けれど、自分でつくった「枠組み」を一度外してみれば、本当の「心地よい日々」が見えてくるのか もしれない。

取材/文 伊野奈緒美